菅総理大臣が初めて行った所信表明の内容については、国会内外で様々な質疑応答や
議論が飛び交っています。
この報告では、環境委員の立場から「温暖化ガスの2050年実質ゼロを目指す」という点を
取り上げて考えたいと思います。
発生する炭酸ガス等の温暖化ガスの量と等量の吸収策を講じる事により、実質的に
プラスマイナスゼロにするという目標が設定され、年限が定められた事は、大いに評価されるべきだと思います。
従来の目標値は、2030年に2013年度比で26%削減、長期目標として、2050年迄に80%削減する
というものでしたが、政府は、従来、ゼロ迄減らす年限に付いては明言を避けて来ました。
今回この点を明確にした事で、遅ればせながら、EU等世界の流れに遅れまいという我が国の姿勢が、内外に表明されました。
この目標を実現する為には、社会の仕組み、技術、経済や金融等々、ガスの発生から吸収に至るすべての過程の中で、
広範囲な抜本的な改革・改善・改良が要求され、それらは必然的に、関連分野の潜在能力を覚醒させ、
発展させる原動力になると考えます。
従来のエネルギー基本計画では、いわゆる3E+Sを標榜し、2030年度の電源構成を、原子力発電20〜24%、
再生可能エネルギー22〜24%、火力発電56%と規定していますが、今後の具体的な施策に於いては、
現に、少なからざる問題点が存在している事を見過ごしてはならないと思います。
例えば、今回の政府案は、再生可能エネルギーを目標時の主力電源としていますが、
既に、太陽光や風力発電の新電力会社や個人が、電力の買取拒否に直面したり、
止むを得ない面があるものの、買取価格が低下するという事による固定価格買取り制度(FIT)の形骸化が懸念され、
更に、木質バイオマス発電の主力燃料であるパームヤシ殼の輸入が、制度的に実質規制局面にある等、
これら阻害要件は速やかに解決されなければ、将来の展開は無理であると考えます。
他面、政府は原子力発電をも重要な電源として認定しています。これは、完全に廃止宣言をすべきであると考えます。
政府は、現時点では、新規原発の建設は考えていないと表明していますが、今後、コストや危険性が低いといわれる
出力を抑えた小型モジュール原発を含め、新規原発の建設が強行される可能性が、ゼロだとは断言出来ません。
当委員会は、かねてから、原発の逐次廃止を主張していますが、使用済み核燃料の処理策が、確立されたとしても、
自然災害大国の我が国においては、稼働に伴う事故の危険性は常に存在し、既に経験しているところです。
コロナ禍の為中止となった両国祭に代わり、淡交会のホームページに展示を行うべく準備中です。
ご期待下さい。
更に、今年は、細谷和海さん(67回、近畿大学名誉教授)が、メンバーに加わりました。
皆さんも、是非ご参加下さい。
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