平成23年の東日本大震災から8年が過ぎました。
東京都は、翌平成24年に、それ迄の「首都直下地震等による東京の被害想定」を見直し、直下地震2つの型、
海溝型地震、活断層で発生する地震、の合計4つの直下地震を想定し、概要版を発行しました。
昨年の両国祭では、関連の展示と資料の配布を致しました。
その内容の基礎になる点を下記のとおりご報告し、来るべき大災害への備えを提起致します。
我々が直面する基本的な問題点は、軟弱地盤の多い低地に、密集して建てられた住居と、
そこに発生するあまりに多くの避難者。従来の公助の概念では、それらに対応出来ないという事です。
先の4つの型の中で、今回取り上げた条件の最も厳しいと考えられる東京湾北部地震(注)の場合、
当校の旧学区(墨田、江東、葛飾、江戸川)の4区では、約180万人の夜間人口の内、約75万人もの避難者が、
発生すると予測されています。
更に、これらに周辺の台東、荒川、足立の3区を加えると、総人口約290万人の内、避難者は122万人に達します。
これだけの膨大な避難者を受け入れる場所・空間は、この地域内では勿論、周辺地域を含めても手当てする事は、
まったく不可能であり、住居の無い避難者が、瞬間的に大量に発生する事になります。
昨今、地震災害に対応する策として、自助・共助・公助の掛け声が強まり、その中でも、
自助への社会的な要請が高まっています。
区民の側でもそれに応え、必要資材の備蓄等の努力が進んでいる事は、大変心強いところです。
しかし、個人や家族による自助努力の効果が続けられるのは、時間的には、多くは被災後三日間から
1週間程度が限度でありましょう。
地域地縁による共助は、必要不可欠ではあるものの、被災後の救助救済活動から公助が発動されるまでの
一定の期間と地域に限定されるものと考えられます。
それでは、公助はどうでしょうか。
現在、他の大震災の際に実施されている地方自治体や国による公助は、仮設住居を建設する段階までを考えても、
ごく限られた数の避難者を数年間受け入れるに止まらざるを得ない状態で、前述の75万人、122万人規模の避難者に、
たとえ短期的にでも、対応する事は不可能と考えられます。
即ち、現在行われている公助は、明日にでも発生するかも知れない東京直下大地震に対応する為には、
時間的に数量的に空間的に安全安心な生活環境を、長期的に大量の避難者に提供出来るよう、又、
次に指摘する震災関連死防止の為、抜本的に考え方を変え、対応策を予め想定し、策定する、いわば、
公助-Uに進化させなければならないと思います。
具体的には、各自治体や国は、震災直後の問題の処理に没頭しなければならない現行の組織とは別に、
先ずは、早急に新組織を立ち上げ、起動させる事が必須であると考えます。
大震災後には、必ず震災関連死の問題が発生します。
東日本大震災の場合、その数は、平成30年9月末までに、3,701人が認定されており、その内の9割が、
60歳以上です。
東京が直下大地震に襲われた場合、その数は比較にならない程大きくなる事は必定です。
又、大量の避難者の受け皿としては、現在、各区が、避難者受け入れを明記した
災害時相互援助協定を結んでいる関連自治体との具体的な協議を進める事が肝要であり、
有効であると考えます。
両国祭の展示の際には、協定締結先自治体名等のリストを来場者に配布しましたが、
それぞれが、当該の協定の行動予定の策定に努力し、現実的に避難者の長期大量受け入れに即応する
体制を作り上げる事が重要だと考えます。
(注) 東京湾北部地震の想定条件:冬の平日、午後6時、M7.3、震度6強、風速8m/秒
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