○ 概要は以下の通りです。
「世紀が変わった場合、15〜20年くらい経つと、その特徴が見えて来る。あと5年くらいの
内に、地球環境の変化やSNSを介した国境を超えたコミュニケーションの発達などによって
齎らされるであろう、今世紀の特徴がより明らかになってこよう。
ベトナムは、南シナ海の西沙(パラセル)諸島、南沙(スプラトリー)諸島で領有権問題を抱えている。
西沙諸島は、1974年以降 中国が全島を実効支配している。 ベトナムは、中国が武力で支配したとして、
これを認めていない。 南沙諸島は、中華人民共和国、中華民国、ベトナム、フィリッピン、マレーシア、
ブルネイが 諸島の全部または一部の領有権を主張している。 中国は、2014年から人工島造成や滑走路建設
を進めている。
中国は この海域において、2000年前から活動していたという 歴史的事実を基に、領有権を主張している。
一方、ベトナムやフィリッピンの主張は、国連の海洋法に基づいている。 中国には良質の紙が古くから存在する
ので、南シナ海における歴史的権利を裏付ける証拠を、書き物として有している。 一方、東南アジア諸国には、
10世紀以前の 領有権主張を裏付ける書類が少ない。
国連海洋法は、1982年に締結され、1994年に発効となっている。 これによれば、島と認められる条件の一つは、
大潮の満潮時でも 水面上に出ていなくてはならない。 島を拠点に領海 (12海里)、排他的経済水域 (ZEE、200海里) を設定できる。
ZEE内では、漁業権、海底資源の開発権を有する。 ただし航行の自由は保障されている。
フィリッピンは、2015年に国連仲裁裁判所に、中国は国連海洋法違反として、提訴を行った。 中国は相手国の
同意がない提訴は無効であると主張している。 この判決が7月12日に出る予定である。 中国に不利な判決が
出そうではあるが、この判決がどのようなものになり、その結果 中国がどのように反応するかはとても興味深い。
また、日本の尖閣諸島の領有権問題にも関連してくる。
ベトナムは単独では中国に勝てないが、それでも負けることなく抵抗してきた。 ベトナムの人たちは、領土・
領海問題に関しては、不退転の決意で臨んでいて、この点では中国に負けない。 また、アメリカとは連携したいが、
ベトナム戦争という過去がある。 日本との関係は、対中国の点からも一層重要になっている。 ベトナムは、
したたかに、慎重かつ大胆にふるまっている。
講演は、しばしば 日本でも報道されている、南沙諸島の領有権問題に関するもので、わが国にも大いに関係する
問題であるため、出席者は真剣に聴講した。 7月12日に出される予定の 国連仲介裁判所の判決に 大いに
注目したい。
時宜にあった とても良いお話を ありがとうございました。
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