【 淡交会 会報87号 インタビュー記事 】  画面更新して、見て下さい。   最終更新日: 2021/12/18  
―― どんな仕事をされている
のですか?
「東大病院の患者さんの血液
検査を主に担当しています。
検体を検査機器にかけて結果
を報告します。外来患者さん
からは採血もします」
―― 注射針の採血は上手な方
だと痛くないのですが…。
「最初は私もたくさん失敗し
ました。多くの患者さんから
たくさんの経験を積ませてい
ただき、少しでも上達できる
よう日々精進しています」
―― 臨床検査技師っていろい
ろな検査をしますよね。
「医師の指示に従って、生休
の一部(血液・髄液・組織な
ど)や排泄物(尿・便・喀痰
など)を検査する検体検査と、
心電図や超・盲波(エコー)検
査など直接患者さんに対して
行う生理検査を行います。国
家資格で認められた者で、病
気の診断や治療の現場で重要
な役割を担っています」
―― 新型コロナウイルスには
関わっていますか?
「東大病院では、入院予定の
患者さん全員にコロナの抗原
検査を実施しており、私はそ
の検体採取を担当しています」
―― PCR検査とは 違うの
ですね。
「鼻咽頭を拭って検体を採取
するのは同じですか、ウイル
スが持つ特有のタンパク質を
検出する検査方法で、短時間
で結果が出ます」
―― 検査では何が大事ですか?
「精度管迎です。精度管理と
は、いつ、どこで検査を受け
ても同じ検査結果か出るよう
にすることです。昨年、急に
新型コロナウイルスが流行り
始めて、陽性か陰性か、日本
中で新しい検査法の確立が求
められました。本来、一人の
患者さんが異なる病院で検査
を受けても、同じ結米か出る
ことが望ましいのですが、実
際には施設によって検査機器
や試薬などか異なりますので、
同じ結果を出すことは難しい
です。
 臨床検査技師は日々患者さ
んの検休を検査するだけでな
く、検査の質を保証すること
も大切な仕事の一つなのです。
新型コロナウイルスの検査は
まだ歴史が新しく、他の血液
検査などとは違った精度管理
の難しさがあります。綿棒で
の検体の取り方や、複数ある
検査工程のどこか一つでもダ
メなところかあると、判定を
誤ってしまいます。責任重大
      ですが、その一祁
      にでも関われます
      ことは、とてもや
      りかいのある仕事
 と感じています」
 ―― 医療ひっ迫で人院できず
 自宅療養中に死亡するコロナ
 患者が少なくありません。日
 本の医療体制は何とかならな
 いのですか?
 「人院できず自宅で亡くなる
 方かいらっしゃるのはすごく
 残念です。しかし、病院の医
 師、石護師をはじめとする医
 療従事者の方々はどんなに患
 者さんが増加しても極力医療
 の質を落とさず、一人ひとり
 の患者さんに誠実に対応した
 いと精一杯頑張っていらっしゃ
るように感じます。検査技師
として、出来る限りのフォロ
ーをしたいと強く感じていま
す」
―― コロナは今後どうなりま
すか?
「変異株か次々と出てきてい
ます。来年もマスクをして密
を避ける新しい行動様式か続
くと思います。風邪やインフ
ルエンザのように、治療薬が
開発されますと、今より大き
く状況が変わるかもしれま
せん」
―― ところで、なぜ臨床検査
技師になったのですか?
「高3の時。化学の中田(吉
雄)先生に無機化学の実験を
させてほしいとお願いしたら、
授業時問外にやらせてくれま
した。定性分析で水溶液に入っ
ている金属イオンが何か調べ
る実験で、「化学は面白い!」
と感じました。化学を人のた
めに役立てられる臨床検査技
師の存在を知り、自分に向い
ているのはこれだと思いまし
た」
―― それで東京医科歯科大学
医学部の保健衛生学科に進学
された訳ですね。
「迷いは ありませんでした。
大学を4年で卒業し、臨床検
査技帥の国家資格を取った後、
大学院5年で保健学の博士号
を取得しました」
―― 東大病院を選んだのはな
ぜですか?
「医科歯科大附属病院にも履
歴書は送ったのですが、たま
たま東大病院の試験か先にあ
り、採用の通知をもらったの
で決めました。当時30人ぐら
い受け採用は5人でした」
―― 東大病院は大きな病院で
すよね。
「医師1600人、看護師1
400人、事務職員を含め総
勢4300人余りで、検査技
師は約120人います。1日
当たりの外来忠者数は約30
00人、平均採血患者数は約
840人です」
―― 検査技師の男女比は?
「東人病院では男性が約4割
程ですが、業界的にはかなり
女性か多いと思います。医科
歯科人のクラスは1クラス35
大のうち男性は5人でした。
どの学年も毎年それくらいで
す。専門学校や短大を出ても
国家試験を受けて検査技師に
なれます」
―― 臨床検査技師は責任の重
い仕事ですね。
「常に冷静に対処することが
求められます。機械の自動化
が進んで、検体を機械にかけ
れば自動で結果が返ってきま
      すが、その検体
      の背景には患者
      さんがいること
      を常に忘れない
      よう心がけてい
      ます。病気の早
      期発見や、患者
      さんの命を救う
      手助けもできる
      ので、とてもや
      りがいのある仕
      事です。基本的
      には裏方の仕事
      ですが、多くの
      方に検査技師を
      目指してもらい
      たいと思います」
       ―― 何を目標に
      仕事をしているの
ですか?
「一人ひとりの患者さんに正
確な検査結果を報告すること
を常に心かけています。日々
の業務の中で、患者さんの尿
中に排泄される糖尿病治療薬
が検査結果に影響しているこ
とを発見しました。この発見
とその解決策を、今は学会や
論文で発表できるように準備
しています。東大病院以外の
方々に私の発見を活かしてい
ただければ、日本中の患者さ
んの検査を今より少し正確に
できます。とてもワクワクし
ています」
―― さて、両国高校での思い
出を聞かせてください。
「文化祭(両国祭)で生物部
としてスライムを出し物にし、
附属中学校を見に来た小学生
たちに受けました。スライムっ
て分かりますか?どろどろっ
とした半固体の物体なのです
が、当時子供たちに大人気で
した。とても疲れましたが、
本当にたくさんの方々に喜ん
でいただくことができ、すご
い充実感と満足感だったのを
覚えています」
―― 部活は生物部ですか。
「黒田(淳子)先生が顧問で、
植物中心の野外実習によく出
かけました。高校を卒業して
も何年かOBとして参加させ
ていただきました」
―― 記憶に残る先生は?
「黒田先生と担任だった数学
の小澤(理志)先生です。医
科歯科大の入試問題って、生
物はすごい長文の物語調で、
国語の問題みたいでした。国
語は苦手だったので、受験前
に黒田先生にご指導いただき
ました。先生に『吉本君はこ
れで読解力もついたね』と言
われ、嬉しかったことを覚え
ています」
―― 両国高校で学んで良かっ
たと思いますか?
「思ってます、思ってます。
受験勉強ってつらいイメージ
かありますが、僕はとても楽
しかった。先生方がいつ行っ
ても優しく丁寧に教えてくだ
さるので、高校で勉強するだ
けでよかった。友達もいまし
たので苦ではありませんでし
た」
―― 趣味を聞かせてください。
「今はコロナで出かけられな
いのですが、以前は旅行が好
きでした。夜行列車で一人旅
したり、旅先でレンタカーを
借りてドライブしたり。最近
は株式投資を楽しんでいます。
お金が増えたり減ったりする
楽しさももちろんありますが、
こんな会社があるんだとか、
こうやって世の中は回ってい
るんだとか、視野かとても広
がります。教科書では学べな
い人生の勉強になります」
―― 最後に、後輩に一言お願
いします。
「思い出をたくさん作ってほ
しい。大切な親友が出来る時
期だし、いろいろなものを吸
収できる、人生で一度しかな
い機会です」
(25日、亀戸のアンフェ
リシオンで )( 宇田川 )
   ◇ ◇ ◇
 よしもと・あきら 198
月、東京都豊島区生ま
れ、32歳。東京大学医学部附
属病院検査部の臨床検査技師。
保健学博士。
 江戸川区立鹿本小、鹿本中
を経て2005年4月、両国
高校に入学、08年3月に卒業
した。
 08年4月、東京医科歯科大
学医学部保健衛生学科検査技
術学専攻に人学し、12年3月
に卒業。同年4月、同大学大
学院保健衛生学研究科生体検
査科学専攻の博士(前期)課程
に人学し、14年3月に修了。
引き続き同年4月、同博士
(後期)課程に人学し、17
3月に修了した。
 17年4月、東京大学医学部
附属病院検査部に入職。現在
は臨床化学検査室に勤務して
いる。