【 淡交会 会報89号 インタビュー記事 紹介 】     最終更新日: 2022/12/18  
―― ピアノは何歳から始めた
のですか?
「5歳からです。幼稚園の年
中組で週1回のレッスンでし
た」
―― 教わった先生は?
「小柏典子先生(両国高校70
回生)です。高3の18歳まで
14年間教わりました」
━━ どんな子どもだったので
すか?
「小学校では引っ込み思案で
全然しゃべれなかったんです
よ。それが小6の時の音楽の
授業でピアノ伴奏をしたら、
すごいねって言ってもらえて。
とてもうれしかったし、自信
が付きました」
━━ 将来ピアニストになろう
と思ったのはいつですか?
「今お話した小6の時の伴奏
で褒められたことがきっかけ
です。音大に行きたいと思っ
て小柏先生に相談したら、音
楽家としてまともに仕事する
なら芸大か桐朋(学園大学)
じゃなければだめと言われま
した。ピアニストになる人っ
て子供の時から練習を積み重
ねてコンクールを毎年のよう
に受けているのですが、私は
そういう感じではなかった。
芸大のピアノ科は入学が大変
なので、楽理科を目指したら
どうかと勧められました」
━━ 楽理科ってどんな学科?
「音楽史、音楽理論、民族音
楽等、音楽に関する知識を幅
広く学ぶ学科です。ピアノは
そこそこ弾ければ良くて、卒
業後の進路も様々。研究者や
評論家になる人も少なくあり
ません」
━━ 両国高校に進学したのは
何故ですか?
「芸大楽理科は英語が難しい
し勉強も厳しい。両国高校だ
と塾に行かなくてよいし、塾
に行く時間をピアノや音楽の
勉強に充てられるので、ピア
ノと勉強を両立できる。『楽
理科を目指すには両国高校が
ベスト。大丈夫よ!』と、卒
業生の小柏先生が太鼓判を押
してくれました」
━━ 両国高校で部活は何を?
 「帰宅部です(笑)」
━━ 思い出はありますか?
「2年生の両高祭(現両国祭)
でお化け屋敷をやったのが楽
しい思い出です。教室を真っ
暗にして。私は着物姿で床に
倒れている死人役で、来場客
の脚を触って脅かしました」
━━ ピアノと勉強の両立は
大変でしたか?
「授業は予習していくのが当
    たり前で、1年生の
    時は必死でした。で
    も、2年生になって
    ほどほどにやること
を覚え、少し楽になりました」
━━ 練習を1日も休めないの
で修学旅行に行かなかった、
と有名なピアニストが言って
いましたか、岩崎さんはどう
でした?
「確かに中学・高校のまだ身
に付いていない段階で、練習
を1日休むと3日後戻りする
とか言われます。でも、私は
修学旅行に行きました。弾く
だけが練習ではないと思いま
すし、思い出や体験はとても
大事だと思います」
━━ 両国高校で印象に残る先
生は?
「数学の島田(順)先生です。
数学は苦手だったのですが、
早く授業が終わらないかな?
と時計と先生の顏を交互に見
ていたら、『さっきから僕の
顔と時計をちらちら交互に見
ている人がいる。それは岩崎
さんです』と注意され、注目
を浴びてしまいました。面白
い先生でした」
━━ 芸大受験に向けてピアノ
の特訓はしたのですか?
「小柏先生のご紹介で16歳か
ら市毛寛子先生の所にも通い
ました」


━━ NHKアナウンサーの林
田理沙さん(夜7時のニュー
ス)も芸大楽理科出身と聞い
ています。ご存知ですか?
「林田さんは1年下なので、
授業が一緒のこともありまし
た。ちょっと挨拶する程度で
した」
━━ 林田さんは絶対音感を持っ
ているそうです。岩崎さんは?
「子どもの頃からピアノを弾
いている人だったら、絶対音
感は身に着いちゃうものかな
と思います。楽器の音や音楽
がドレミで聞こえます」
━━ アレクサンダーテクニー
クを学んだと聞きましたが。
「F・M・アレクサンダー
(豪)の発見した原理に基づ
いて、心身の不必要な緊張に
気付き、これをやめていくこ
とを学びます。頑張れば頑張
るほど出来なくなるとか、緊
張をやめようとすればするほ
ど緊張してしまうとか、頭で
の考えと体での動きとの間に
は関係があり、頭と脊椎の間
のプレッシャーが少なくなれ
ば、音楽、演劇、スポーツに
おけるパフォーマンスが向上
します。大学を出てから5〜
6年、月I回、石坪佐季子先
生の所に通いました」


━━ これからの目標は?
「曲をこう弾きたいという自
分の理想に関しては妥協せず、
常に音楽に真摯に向き合える
音楽家でいたいと思います」
━━ 趣味は何ですか?
「ピアノつて座りっぱなしな
ので、体のバランスを保つた
めにヨガをやってます。家で
毎日30分〜1時間ぐらい。ス
マホでインストラクターの動
きを真似て。良い運動です。
あと沖縄で目覚めたシュノー
ケル。サンゴ礁がとてもきれ
いで感動しました」
━━ 両国高校で学んで良かっ
たですか?
「すごく良かったと思います。
   音高−音大のコースも
   あったのですが、小柏
   先生か高校までは普通
   高校の方が世界が広が
   ると言ってくださって。
   実際、音楽家の世界っ
   て特殊で狭いので、普
   通高校の経験がすごく
   大事だったと感じます」
   ━━ 小柏先生のサポー
   トが大きかったようで
   すね。
   「ピアニストになる夢
   に賛成してくれたのは
   母と小柏先生でした。
   先生は私か音大に行く
   までの道筋を整えてく
   れただけではなく、先
   生か強烈に応援してく
   れたことが私の大きな
支えになりました」
━━ 両国の後輩に一言お願い
します。
「高校時代をひたすら楽しん
でほしい。ただ、頭の片隅に
置いてほしいのは、こういう
風になりたい、こういうこと
をしたいという目標を持つこ
とです。やりたいことが決まっ
ていないと、どうしても目の
前の大学受験だけになってし
まう。出来るだけ目標を決め
て、それに向かって逆算して
勣けるとすごく充実した時間
になると思います」


━━ この後、音楽室で淡交会
が母校創立120周年を記念
して寄贈したグランドピアノ
を弾いていただきますが、曲
目は?
「シベリウス作曲の『ピアノ
ソナタ』第3楽章です」
━━ シベリウスが好きなので
すか?
「ショパンやベートーベン、
ラベルが好きですが、最近シ
ベリウスも面白いかなって思っ
ています。聴きやすい曲が多
いです」
(9月16日、両国高校音楽室
&淡交会事務局で)(宇田川)
   ◇  ◇  ◇
いわさき・ゆい 1988
10月、江戸川区小岩生まれ、
34歳。
 江戸川区立東小岩小、小岩
第一中を経て2004年4月、
両国高校に入学、7年3月に
卒業。同年4月、東京芸術大
学音楽学部楽理科に入学し、
11年3月に卒業した。
 卒業後、合唱団やソリスト
の伴奏をしながら、自主企画
のコンサートを開催するなど
の演奏活動を行い、後進の指
導にも力を入れている。
 これまでにピアノは小柏典
子、市毛寛子、中野洋子、市
毛景子の各氏に師事。また、
声楽を矢崎亮子、アレクサン
ダーテクニークを石坪佐季子
の各氏に師事し、様々な角度
から音楽表現の可能性を探求
している。
 ドイツのヴォルムスにおい
て開催されたピアノマスター
クラスに5度参加し、マンフ
レッド・アウスト、ヨセフ・
アントン・シェラーの各氏の
レッスンを受けた。
 これまで3回にわたりソロ
リサイクルを開催。2019
年2月の淡交会新年会でピア
ノ独奏を披露、今年7月の淡
交会総会で淡交混声合唱団の
伴奏を務めた。