( スマホ対応 )  作成日 : 2021/03/10   
生物多様性とは何か? 進化・適応から考える
環境委員  細谷 和海 (第67回卒業)
 人類の過剰な開発によって地球環境が著しく損なわれています。現在は、
地球上の生命が出現して以来第6回目の大量絶滅期に相当し、しかも去過の
大量絶滅に比べて規模が大きく個々の生物の絶滅速度が著しく速いと言われ
ています。 一方、人類がさまざまに自然に依存し野生生物と共存している
以上、生物多様性を正しく理解しそれを保護しなければなりません。
 一般に、生物多様性とぱ 地球上のすべての生命が 遺伝子・種一生態系の
順に階層をつくり、それぞれが変異性を保ちながら存在するこど と定義され
ています。生物多様性には進化的背景があり、それぞれの構成要素は長い年
月をかけ相補的な関係を築きあげてきました。 このような生態学的自律性
は風土性の原則とよばれています。 そのため、生物多様性の保全対象は在
来種に限られ、外来種は除外されることになります。
 日本列島においても野生生物の生息環境は急速に悪化し、我が国固有の生
物多様性は劣化の一途をたどっています。 これに対して日本政府は日本の
生物多様性の危機要因を4つに大別しています。

 “第1の危機" は開発による危機で、生物資源の乱獲、森林伐採、埋め立
て・浚渫、宅地開発、そ血豆憊場整備など自然環境を過度の人工化させるこ
とによって引き起こされます。 反対に
 “第2の危機" は 人の適度の干渉が止まることにより 自然と人為のバラ
ンスがくずれ、生物多様性に 負の効果をもたらします。 たとえば 里地・
里山の荒廃は 耕作放棄をきっかけに 引き起こされます。

 近年の シカやイノシシの異常増加は 人への農業陂害にとどまらず、健全
な生態系の 秩序を乱しているのは よく知られるところです。

“第3の危機" は 在来の生態系へ侵入する要素がもたらす危機で、生物と
しての外来種、化学物質としての 農薬と殺虫剤が 挙げられます。
 日本の水辺では ブラックバスなどの外来魚は 言うまでもなく、近年では
ネオニコチノイド系の殺虫剤により ヤゴなどの水生動物が 大きな影響を受
けています。

 “第4の危機" は地球温暖化がもたらす 2次的影響です。琵琶湖では冬季
水温が高くなったため 湖底と表層の水循環が止まり、その結果 栄養塩の湧
昇は阻害され 湖底は 無酸素状態となり、生態系は大きく劣化しています。
 生物多様性を保護する方法には、野外の生息地をそのまま守る“生息域内
保全"、および絶滅に瀕した生物を 特定の施設内に収容し その系統を維持す
る“生息域外保存" があります。

 野外で得られる情報と 施設内で得られる情報を 相互にフィードバックさ
せると、保護はより効果を発揮します。このことから両者は相補的関係にあ
るべきで、保護における 車の両輪に 例えられるでしょう。
 加えて、実際に絶滅危惧種を 野外で保護するためには、 一般市民の参画
は欠かすことができません。 長い年月をかけて 創出された生物多様性を
人類共通の財産 と考えると、それを 先祖から受け継いだのが 現代人なら、
それを次代に伝えるのも 私たちの務めであるはずです。