2011年3月11日の東日本大震災は、日本の痛みだけではなく、世界の人々に大きな教訓を
与えたのではないでしょうか。
自然の脅威を乗り越え、豊かな生活を勝ち取ってきたと思っていた現代文明が、
今回のような、あまりにも大きな自然災害には、全く力不足だということを知らされました。
石油や原子力、電気を活用した、便利な文明社会も根幹が揺らぎ、今までの文明を
抜本的に見直さざるを得ない状況におかれています。
資源のない日本は、明治維新後、欧米に追い付け追い越せと、遮二無二走り続けてきました。
特に第2次世界大戦の敗戦以降、辛い農林水産業から、皆が豊かになれる生産性の高い工業・貿易立国に
なろうと政府がリードし、企業と国民みんなで、努力してきました。
それは、外国の安い資源を大量に購入し、良い商品を製造し、付加価値をつけて高く販売できたために可能でした。
一時は、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われ、世界一と感じられる時期もありましたが、
そのバブルがはじけ、その後の経済不況は、20年以上も続いています。
その間に、中国、インド、ブラジルをはじめ、世界各国の工業化が進展し、日本の工業シェアは、
減少し続けています。
そのため、従来のビジネスモデルや、企業の在り方は、継続困難で、抜本的な国の在り方の転換が
不可避となっています。
これからの日本は、欧米のように自然に立ち向かうのではなく、昔から行ってきた人間と自然が共生する
文化に戻る必要があるのではないでしょうか。
幸い日本には、江戸時代に、鎖国という外国との関係を閉じて国内資源のみで生活してきた経験があります。
当時の都市部の下肥と近郊野菜・農産物のリサイクルの資源循環型ライフスタイルは、高く評価され、
世界でも最も清潔な都市だったと言われています。その時代に戻るならば、
外国の資源に依存しない国のあり方が可能です。そんなことは、急にはできませんが、
徐々に転換していくことは可能ではないでしょうか。
一度失った自然を元に戻すのは大変ですが、最近、川がきれいになり、鳥や魚が戻りだしていること等を
考えると、素晴らしかった自然を回復することは可能です。
昭和35年まで、東京湾は広大なアサクサノリ漁場が広がっていましたが、高度経済成長期に
大部分の海域がゴミや海底の土砂で埋め立てられ、海や川の水質は悪化しました。
しかし、環境改善が進み、筆者の家に近い小名木川にハゼやボラが増え、カワウ、サギをはじめ、
カワセミまで飛ぶようになりました。
さらに、東京湾のアサリなどを再生することができれば、東京湾をはじめ、再び「自然豊かな国」に
再生することが可能です。
最近、野田市を中心に「コウノトリと共生するまちづくり」プロジェクトが、始まっています。
兵庫県豊岡市で成功した「コウノトリ復活プロジェクト」に学び、コウノトリの餌となる
カエルやドジョウや小魚等の小動物が、生息できる冬水たんぽ、有機農業・少農薬農業に転換しようとした
動きが関東自治体の連携で始まっています。
それは「資源のない国」から「自然豊かな国」への大きな転換を意味する胎動です。
これからは、従来の西洋に追い付け追い越せと、近代科学技術に基づく科学技術一辺倒の国のあり方から、
日本が得意とする、「自然と人の共生社会」づくりをペースとした国づくりに戻すことが望まれます。
「江戸時代、浅草の浅草寺には、コウノトリが繁殖し、本所・向島の湿地にはトキやツル、シギの仲間などが、
数多く生息するなど、江戸の町とその周辺は野鳥天国さながらでした」と、元両国高校生物教師
・都市鳥研究会代表の唐沢孝一先生は語っていますが、そんな自然豊かな国への転換を夢見ています。
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