(スマホ)  作成日:2022/02/09 by AM   
  

 「生物多様性の保全」が大切だと言う時、確かに、総論的にはそうだと思うが、具体的に、 「何故?」「どうして?」に科学的に明確に答えるのは難しい。
或る生態系の中の或る生物が絶滅した場合、どのような影響があるのかという科学的な研究は、欧米が先行しているものの、 具体的な成果は多くはないようです。
日本では、実例を挙げての現場研究が主流だと思います。
また、私は、学校教育の場で「生物多様性」に付いて勉強した事はありませんが、切り離す事の出来ない 「地球温暖化防止」と併せ、当然、重要な教育のテーマだと思います。

 自然現象を別にすれば、人口の爆発的な増加、環境破壊や汚染、外来種の導入等々、人間の活動が、 種の絶滅をもたらす主な原因になっています。
それらの活動により、恐ろしい程の速さと規模で、一定の種の生息環境が、場合によっては 生態系そのものが、根こそぎ破壊されてしまう事が起っています。
世界で、年間4万種もの種が絶滅しているという現実を是正する為には、生息環境、生態系そのものを 保全する事が必須だと思います。

 一つの生態系の中で、或る生物が存在を止めた時、他の種に致命的な影響を及ぼし得る例として、 幸い、未だ実際には起っていない現象ですが、懸念される身近な一つの可能性として、 日本海の魚類の生態系の一例を挙げたいと思います。
ハタハタ、ノドグロ、ブリ等々、名前を聞いただけでも…。
これら多種多様多量の全ての魚類が、直接・間接に主な餌としてお世話になっているのは、 たった1種の小魚「キューリエソ」だと言うのです。2兆匹を超す生息数。体長わずか4cm程、 水深200〜300m程度の海中に棲む小魚。生態は未だ良く判っていないそうです。
これが、上位捕食者を経て大型魚、更には、人間迄の食物連鎖の要(生態系の要となるキーストーン種) になっている訳です。
 地球には、海水の大循環があり、両極域で冷やされた海水が海底に沈みこみ、2000年ともいう時間を 掛けて、全世界の海を廻り、最後は、表面海流となって、また両極域に戻るというものですが、 地球温暖化の影響もあってか、この大循環の速度が遅くなっていると説く研究者もいます。
越前クラゲの大発生とその原因追求も大きな問題ですが、「キューリエソ」が何等かの理由で 数を減らしたとしたら、その影響は?これは誰でも判る事でしょう。

 「里山イニシアティブ」。日本発の生態系の保全策として、 今回のCOP10において提案されました。
日本の里山の維持・管理技術は、里海の概念も含め、一つの伝統的な文化そのものであると思います。
世界には、広大な砂漠や草原の国があり、1年の多くを凍土に覆われる国もあって多様です。
実際の展開には、多くの困難があり、工夫が必要だと思いますが、基本的な自然との関わり合い方の構想を 共有するものとして、この日本文化を発信し、世界的な拡がりにする丈の有意性があると思います。

 最後になりますが、生物多様性条約の前文には、女性の不可欠な役割が明記されており、 女性の参画が重要とされています。
是非、積極的に活動して戴きたいものと思っています。

淡交会環境委員 磯貝三男(56回)
   (淡交会報第65号より転載)

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