「がんが治る方向の治療がない、という患者さんに対して、何ができるのかと考えて、
2001年から 在宅緩和ケアの診療所を開きました。
開業当初、入院していても痛みの取れないまま退院する患者さんの診療を依頼されて、
心配しながら訪問すると、“痛みない”という患者さんは 笑顔でした。“自分の家”
には不思議な効果があります。 緩和ケアは WHOが 2002年に定義したものが
グローバルスタンダードになっていますが、がんの痛みの治療は鎮痛剤だけではあり
ません。 在宅緩和ケアは痛み、苦しみを緩和してその人の尊厳性を保ちつつ、患者
の生活を総合的な観点視点から支援するものです。
そのためには、患者さん本人を中心に医師、看護師、患者の家族が一つのケアチーム
となって 一緒に相談できることが 大切です。
“痛み”は痛いと感じるだけでなく、怖かったり悔しかったり 等の情動を伴うので
非常に複雑な要素が関係しています。 戦場で重傷を負った兵士が痛みを感じていな
かったとか、スポーツ選手が試合中の負傷では、痛みを感じないといったことはよく
あることです。