[ 戸張委員(右)の説明を受ける藤井副校長(手前) ]
展示スペースの関係で 充分意を尽くせず、残念なところもありましたが、その
中で特筆すべきは、三中時代の 同級生で 無二の親友であった 山本喜誉司と西川
英次郎に宛てた 芥川の直筆書簡三通を入手、展示できたことです。
特に山本への書簡は、三人の中で 山本だけが一高受験に失敗した後、山本に宛て
たもので、同情や慰め、励ましの心情と共に、一種の同性愛にも似た友情を 切々
と訴える内容になっています。彼の理知的で冷めたイメージとは異なり、若き日
の 熱く多感な人間味溢れる一面を覗かせる 貴重な資料です。
もう一通は、山本が次の年 一高に合格した後、冷静な心境の下で書かれたもの
で、この中で彼は 先に出した手紙を破るか火にくべるかして欲しいと 山本に懇
願しています。
この二通の手紙を見比べると 前者は字が乱れ、所々墨で消した跡が見られます。
それに比べ、後者は字も整い修正箇所も見られません。 これは、直筆のみが伝え
られる 感動的なところと言えます。
この二通は、吉田精一氏 (23回卒、近代文学研究者で 校門脇芥川文学碑の揮毫
者)のご遺族からお借りした 貴重な資料です。 ご遺族のお話では、この書簡が公
開 展示されるのは 恐らく初めてではないか とのことでした。
山本喜誉司に宛てた芥川の直筆二通(敬 称 略)
山本喜誉司に宛てた芥川の直筆二通(敬 称 略)
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他の一通は、西川の義妹の求めに応じて 英次郎宛に出した手紙と詩箋ですが、
死の六ヶ月前に出されたもので、結びの文章に「多事多難」とあるのが 印象的
です。 これは、英次郎の甥に当たる 西川浩一氏(42回卒)のご好意により
展示させて頂きました。
西川英次郎に宛てた芥川の手紙と詩箋(3点)(敬 称 略)
西川英次郎に宛てた芥川の手紙と詩箋(3点)(敬 称 略)
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会期両日とも 200名を超える来場者があり、そのアンケートでは 芥川の過
ごした 両国界隈や家族、学校生活、親友との交流等に興味をもったこと、特に
直筆の書簡に 感動したという回答が多く見られました。 正に 本物だけが持つ力を
改めて強く感じさせられました。
今回のテーマを 些かなりとも達成出来たとすれば、関係者皆様の 絶大なご協力
の賜物であり、心より御礼申し上げます。
資料室委員 戸張 誠之助(54回)
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